固定残業代について
時間外労働による割増賃金の支払いを請求する際に,会社側からはこれまで支払っている給与のうちに固定残業代が含まれているとの説明がなされることがあります。
その際には,毎月支払われている給与のうち,どの部分が固定残業代に当たるかを確認する必要があります。
最高裁判所第一小法廷昭和63年7月14日判決では,固定残業代の合意が有効になされているか否かについて,通常の労働時間の賃金に該当する部分と割増賃金の部分とが明確に区分されていることを要求しています。
そうすると,基本給の中に固定残業代が含まれているという説明がなされた場合,
上記の判例によって通常の賃金と割増賃金の部分がどこか区分ができていないことになりますので,固定残業代の合意が有効とは言えないという結論になります。
また,基本給とは別に支給されている手当が固定残業代のだと説明をされることもあります。
しかしながら,例えば,東京地方裁判所平成24年8月28日判決では、他の手当を名目とした固定残業代の支払いが認められるためには,①実質的に見て,当該手当が時間外労働の対価としての性格を有していること,②支給時に支給対象の時間外労働の時間数と残業手当の額が労働者に明示され,固定残業代によってまかなわれる残業時間数を超えて残業が行われた場合には別途清算をする旨の合意が存在するか,そうした取り扱いが確立していることが必要としています。
そのため,仮に,会社から手当に固定残業代が含まれているという説明があったとしても,その手当が残業手当など時間外労働の手当であることがわかる名称であればともかく,それ以外の名称の手当が固定残業代というのであれば,上記裁判例の①に抵触する可能性があります。
また,固定残業代を超える残業を行った場合に超過部分が支払われる合意がなく,会社内でそのような取り扱いもないのであれば,上記②に抵触することになります。